英検1級に合格したら、次の目標は「通訳案内士」と決めていました。
国土交通大臣が認定する語学関連では唯一の国家資格です。
日本政府観光局が試験を実施しています。
かつては「通訳ガイド試験」と呼ばれ、英語資格の最難関とよく言われます。合格率は10%以下です。独学の英語オヤジとしてはこれに挑戦しない手はありません。今回はその体験記の1回目。私は3回チャレンジしてようやく受かりましたから。(笑)
まずは一次の筆記試験
『全国通訳案内士』の試験は年に3回チャンスのある英検と違い、年に1回きりです。8月のまだ暑い盛りに一次試験の筆記があり、11月に一次の合格発表。12月に二次の口述試験。翌年の2月に晴れて合格発表というスケジュールです。
筆記試験の科目は
1.日本歴史
2.日本地理
3.一般常識
4.通訳案内の実務(私が受験したときはありませんでした。)
5.当該外国語(英語)
の5科目です。各科目ごとに合否判定があり、結果を翌年に持ち越すことが出来ます。前年に不合格だった科目だけ受験すればOKです。全ての科目が合格しないと二次試験に進めません。
日本史、日本地理はマニアック?
実はこの「全国通訳案内士試験」、この筆記が最大の関門です。あくまで私の印象ですが日本史と地理については約半分が高校の教科書レベルの問題で残りの半分がマニアックなものです。これは教科書の知識では対応できません。
一般常識も全体的にマニアックです。私としてはこんな印象です。受験者の8割方がここでふるいにかけられます。ここをなんとか突破するのが一番の課題です。
このような一次試験であるがゆえに語学の難関資格でありながら英検受験のように帰国子女の皆さんにはあまりアドバンテージがありません。これについては前記事の帰国子女と英語 英検はますます難しくなる? 英検で初めて遭遇した話をご参照ください。
こんな問題も出ました。
私の時は日本史で「三津七湊」(さんちんしちそう)についての問題がありました。室町時代の『廻船式目』に記された当時の十大港湾都市のことです。皆さんご存知でしょうか?おそらくほとんどの方は知らないと思います。これ知っている人はかなりマニアックだと思います。
でも私はこれを知っていました。学校の日本史の授業で習ったわけではなく、実はたまたま私の出身地がこの「三津七湊」の一つで中学生のころ郷土史の本で読んでいたからです。
日本史、日本地理についての問題は「年の功」である程度対応できる。
実はこの「全国通訳案内士試験」、受験者の平均年齢がかなり高いことをご存知でしょうか?
私が最初に受けたのは50代半ばでの時でした。一次試験の名古屋会場では20代、30代の方が半分ぐらいだったと思いますが、二次試験の東京では少し驚きました。控え室である大教室を見渡すと、見たところ平均年齢は私と同じくらい。ひょっとしたら私などはこの中で若い方に入るのではないかと思うくらいでした。年配者に有利なのでしょうか。
大河ドラマファン、歴史小説好きに有利かも?
正直に申し上げるとこの一次試験、日本関連の問題に関する限り、私ほとんど事前の勉強をせずに受けて合格点に達しています。過去問に目を通してみて「これはほとんど勉強無しで対応できるのではないか」と思いました。
問題の範囲は歴史、地理にとどまらず、文学や芸術、芸能、祭り、観光地、恒例行事、民芸品や名産品、伝統工芸など多岐にわたるのですが、実は日本で何十年か生活していれば常識で分かるよう問題もかなりあるのです。
「亀の甲より年の功」とはよく言ったものです。歴史問題も大河ドラマ好きの時代劇ファン、歴史小説好きの人にはさほど難しいとは感じないのではないでしょうか。
私自身、日本史はほとんど司馬遼太郎を中心に歴史小説を通勤電車で読んで知りましたから。
合格者の平均年齢が高いというのもこう言ったところに理由があるのかもしれません。
一般常識は時事問題に広く関心を持っていれば対応できる
一般常識の問題では時事問題、日本の政治、経済、風俗習慣をはじめ、インバウンドを中心とした観光業界の動向について問われます。
これも普段からインターネット等でアンテナを広く張っておくことが大事です。比重の大きい観光業界の動向については観光庁をはじめとした、関連省庁のホームぺージに出ているデータに事前に目を通しておくとよいでしょう。
ウォシュレットの普及率?
「日本における温水洗浄便座の普及率」という珍問?もありました。これについても私は知識としては正確な数字を持ち合わせていませんでしたが、自分の経験から想像して大体これ位ではないかと75%を選択して正答しました。
英語の筆記は相当な準備が必要
英検1級取得者とTOEICスコア900点以上の受験者は英語の筆記試験が免除されます。私が最初に受験したときは英検1級に合格していませんでしたから、英語の筆記試験を受けました。
難しさとしては語彙的にも構文的にも英検1級に比べてかなり難易度は下がります。
ただし、当然ですが日本的な多方面にわたる事柄を英語でどの様に表現するかを問われますのでしっかりした事前対策が必要です。
私の場合日本紹介の英訳本を何冊も音読しました。
特に対策本の定番ともいえる『日本的事象英文説明300選』という本は何十回も音読して慣用表現とボキャブラリーを鍛えました。
日本の風俗習慣や仏教、神道、わび、さび、彼岸、盆、季節の恒例行事、有名な祭りの話などはこういった書籍で知識や語彙を身につけるしかありません。
この日本紹介の英語力こそが、通訳案内士試験の核心です。
英検1級取得者でもTOEICスコア満点でも帰国子女でも相当な事前準備なしにここをクリアすることは正直難しい。これはそのまま有効な二次の口述試験対策でもあるわけです。
つまり、通訳案内士試験においては
日本のことを英語で説明できるか?これがチェックされるわけです。
日本についての十分な知識とそれを説明する高い英語力。これこそがこの試験のハードルが高い理由です。
二次試験についてはまた別の機会に取り上げます。
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。