過去完了形の意味は大きく二つに分けられます。
まず一つは過去のある時に始まったことがその後のある時点までずっと「継続」していることを表す表現です。
「継続」の意味であることは現在完了形と同様です。
違いは「継続」の終点が現在完了形においては現在に、過去完了形では過去に置かれてているという点です。
二つ目は過去における二つの動作、状態が同時ではなく時間的にずれている場合に、より過去のことを過去完了形で表現するものです。
これを「大過去」と呼びます。
この場合「継続」はほとんど意識されません。
この「大過去」は英文の中で最も多く使われる、過去完了形の用法です。
いずれにして過去完了形はほとんどの場合、動詞の過去形あるいは過去の出来事や状態の表現を伴っているのが特徴です。
以下、6つのポイントに絞って述べてみます。
1.過去のある時点までの状態の継続 (その時までずっと~だった)
2.過去のある時点までの経験(その時まで~したことがあった、だった)
3.過去のある時点までの動作、状態の完了、結果(その時までに~してしまっていた、その時~したところだった)
4.「大過去」過去のある時点より前の動作、出来事(時間のズレ)
5.過去完了進行形(その時までずっと~していた)
6.少し特殊な用法 [had hope to V] の仲間
まず、
1.過去のある時点までの状態の継続 (その時までずっと~だった)
・状態動詞を用いる。形は had+過去分詞
Mr. Nakano had been professor of the department for twenty years before he went to Australia.
「中野氏はオーストラリアに行く前の20年間、ずっと同学科の教授を務めていました。」
Scarcely had I been on the island for three days before I wanted to go home.
「その島に三日間滞在したら、もう家に帰りたくなりました。」
It had rained for four days when I arrived in London.
「私がロンドンに着いた時、4日も雨が降り続いていた。」
(着いた時雨は止んでいた。)
Mr. Hirose had lived in Furukawa for twenty years when I visited him.
「私が訪ねた時、広瀬氏は古川に20年間ずっと住んでいた。」
My children had wanted to go to Disneyland for a long time.
「うちの子供たちはずっとディズニーランドに行きたがっていた。」
2.過去のある時点までの経験(その時まで~したことがあった、だった)
・動作動詞を用いる。形は→had+過去分詞
I had never been to Ueno Park until I visited the art museum.
「その美術館を訪ねるまで、私は一度も上野公園に行ったことがありませんでした。」
Shinobu had had several proposals of marriage while she was in college.
「しのぶは大学在学中にいくつかのプロポーズをされていました。」
Before I met my wife, I had never seen such a beautiful woman.
「私は妻に会う以前には彼女ほど美しい女性を見たことは一度もありませんでした。」
I had not been good at math until I was taught by that teacher.
「その先生に教わるまで僕はずっと数学が得意ではなかった。」
He had been happy until all the his family were killed by the war.
「家族が皆その戦争で死ぬまで、彼はずっと幸福でした。」
3.過去のある時点までの動作、状態の完了、結果(その時までに~してしまっていた、その時~したところだった)
・動作動詞を用いる。形は→had+過去分詞
Before dad got home, we had already had all the gyoza dumplings.
「お父さんが家に帰る前に、私たちはもう餃子を全部食べてしまった。」
The plane bound for Shin-Chitose had already taken off before I got to the Toyama airport.
「私が富山空港に着く前に、千歳行きの飛行機はすでに離陸していた。」
Noriko felt comfortable when she got home, because the living room had already been cleaned by her husband.
「規子は、夫がすでに居間を掃除してくれていたので、家に帰ったとき気持ちが良かった。」
The blind pianist had hardly finished playing when the audience gave stormy applause.
「その盲目のピアニストが演奏を終えるや、聴衆は嵐の様な拍手を送ったのでした。」
Scarcely had police arrived at the site before the culprit ran away.
「警察が現場に到着すると、その容疑者はすぐに逃げ出した。」
※hardly~when[before]…., scarcely~before[when]…., no sooner~than…. は「~するとすぐ….する」という頻出構文です。
4.「大過去」過去のある時点より前の動作、出来事(時間のズレ)
・過去のある時点よりさらに以前のこと。「大過去」と呼ばれます。
・動作動詞を用いる。形は→had+過去分詞
※過去に起こった出来事が二つ以上あり、時間の順序に従って述べる時は動詞も過去時制を用います。しかし時間の順序に従わない場合は先に起こったことを過去完了で表します。
He lost the smartphone which he had bought the day before.
「彼は前日に買ったスマホをなくした。」
(明確に過去を示すthe day beforeという表現があるのでhadは無くてもよい)
After he had turned off the TV, he went to bed.
「彼はテレビの電源を切った後、就寝した。」
(行動の順番を示すafterという語があるのでhadは無くてもよい)
She did not speak to me until I had finished my work.
「私が仕事を終えるまで、彼女は私に話しかけなかった。」
※起こった順に述べる場合はどちらも過去時制でOK
I bought a bike, but it was stolen the next day.
「僕は自転車を買ったが、翌日盗まれた。」
He came here, had supper, and went out.
「彼はここに来て、夕食を食べて、出ていった。」
※before, after, by the time, until, whenの接続詞を使った表現では had を使ってもよいが基本的には過去形で代用します。
The general appeared after all the enemy troops left.
「その将軍はすべての敵軍が去った後に姿を現わした。」
All the guests left before dad came.
「お父さんが来る前にお客さんがみな帰った。」
5.過去完了進行形(その時までずっと~していた)
・過去のある時点まで動作の継続。
・動作動詞を用いる。形は→had been+現在分詞(Ving)
※「過去の継続的な動作や状態の途中で、ある出来事や状態が起こる」という表現に用いられることがほとんどです。
It had been raining for three days when I visited Takayama.
「高山に行った時、雨が3日も降り続いていた。」
(着いた時も雨が降っていた。)
The mountaineers had been surviving only on water when the search party found them.
「捜索隊が彼らを見つけたとき、登山者たちは水だけで生きながらえていました。」
The principal had been talking with his students for an hour before the commencement ceremony began.
「校長は、卒業式が始まる前に1時間生徒たちと話していました。」
When I arrived at the stadium, he had been searching for me for half an hour.
「私が競技場に着いた時、彼は私のことを30分も探し続けていた。」
When I turned on the TV, the college student had been flying on a human-powered plane for 40 minutes.
「私がテレビをつけた時、その大学生は40分もの間人力飛行機で飛び続けていた。」
6.少し特殊な用法 [had hope to V] の仲間
以下の動詞を用いた had+過去分詞 to V の表現は「~と思っていたが実際にはできなかった」ことを表します。
※hope, intend, mean, expect, wish, want(HIMEWISH「姫望む」と覚えましょう。)
I had hoped to realize it.= I hoped to realize it, but I couldn’t.
「私はそれを実現したいと思っていたが、実際にはできなかった。」
I had intended to have her go shopping.
「彼女に買い物に行ってもらうつもりだったが、(できなかった)」
He had meant to tell her the truth.
「彼は彼女に真実を話すつもりだったが、(話せなかった)」
We had expected him to work harder.
「私たちは彼にもっと懸命に働いてくれることを期待したのだが、(働いてくれなかった)」
We had wished them to be happy.
「私たちは彼らの幸福を願ったのだが、(ダメだった)」
I had not wanted him to do it so carelessly.
「彼にはそれをいいかげんにやって欲しくなかったが、(ダメやった)」
※過去完了形において、継続、経験、完了、結果、大過去の分類は必ずしも明確ではありません。重複している場合もあります。でも訳の意味がしっかりつかめていれば問題ありません。いずれにしても、「大過去を表現する場合、文中に過去形を伴わない過去完了形はない」ということが大事です。
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。