その他雑記

「陸上自衛隊のH作戦」 かつて秘密裡に行われていたこの作戦の話をします。


今回は、かつて陸上自衛隊員だった私が所属していたある部隊で人知れず秘密裡に行われていた作戦「H作戦」についてお話しします。

以下は私が経験した実話です。元自衛官とはいえ、守秘義務がありますから国防上問題があるものは詳述を控えております。

自衛隊にも普通の会社や学校と同様に夏休みがあります。ただ自衛隊の場合、その組織の性格上、当然のことですが全員が一斉に休むということが出来ません。

「全員夏休みで部隊が空っぽ」何ていうことは国防上ありえませんから、いくつかのグループに分けて順番に休暇をとっていきます。部隊には決められた数(当然これも秘密です。)の隊員が必ず残っていることになります。

部隊に残っているといってもそこは夏季休暇中のことですから実は結構ヒマ(不適切な表現)なわけです。そこでこの「H作戦」のような人目に付かない秘密作戦が各部隊でひっそりと国民の目に付かないところで行われていたわけです。

陸上自衛隊の部隊においては日常の訓練や作業は普通、各中隊company単位で行われます。
各中隊は大体5~6個小隊platoonで編成されており、当時はおおむね100名から150名程度の隊員で構成されていたという印象です。
各中隊の事務所前の予定板に毎月の「訓練計画」というものが貼り出されていました。

「訓練計画」には持久走や銃剣道、小銃射撃訓練、分隊射撃、機関銃射撃、無反動砲射撃訓練、ミサイル発射訓練、地雷処理訓練、第〇次演習、○○戦車連隊支援演習、連隊検閲演習、師団検閲演習、といった「自衛隊らしい」項目の他に日常のルーティン業務として、銃火器や通信機器の整備、装甲車、トラック、ジープ(いわゆる)等の車両整備や車検整備といったものがあるわけです。

各項目の横に自分の名札があり、それぞれの仕事が割り当てられていました。
各中隊での朝礼が終わった後、それぞれの割り当てられた作業、職場に「出勤」していくわけです。

私が部隊配属後にこの最初の八月の訓練計画が貼りだされてたのですが、夏季休暇シーズンのあたりに何日間か線が引かれて、「H作戦」「K作戦」という私たち「新兵」にとって「謎の作戦予定」が貼りだされていたわけです。

自衛隊の行動予定というのは秘匿しなければならないものですから、当然部外者に口外してはならない、家族にも話してはならないマル秘事項です。

行きつけの飲み屋で「明日から演習だからしばらく来れないな。」などと軽々しくペラペラ話してはいけないのです。

この「H作戦」を見たとき私は「これは何だろう、一体どんな作戦なんだろう?」と思い、通りかかった強面の先任陸曹に恐る恐る「これはどんなことをするのか?」と尋ねると先任陸曹はニヤリと笑って「これは秘密作戦だ。当日になったら分かる。ハッハッハ。」とこれまた謎の返し。

さて、その後、その作戦の前日の夕方の終礼で翌日から行われる「H作戦」の参加者の名前が10名ほど読み上げられ、その中に私の名前もあり「集合場所は○○。集合時刻は0500。(ずいぶん早い。起床ラッパ前だ。)服装は上下ジャージ、(えっ?)各自洗面器(再びえっ?)を持って集合。」とのこと。

さてその「H作戦」とは?

集合場所に着くと、分隊長殿曰く「H作戦のHとはハスカップだ。」とのこと。
ハスカップは北海道に自生している灌木になる小さな赤い実で「ハスカップジュース」や「ハスカップジャム」で有名。(検索して写真をご覧ください。)
北海道在住の方や北海道に旅行された方はご存知かと思われます。

これを摘み取って業者に売り、その収益を部隊の工具の購入費用に当てるとのこと。

実際に演習で使っている立ち木伐採や車両偽装のためのノコギリやナタはこういった活動から得た収益で購入しているとの事でした。(裏付けは取っていません。)

何か涙ぐましい話しですが、習志野の空挺団出身のT3曹は「去年、北海道に来たらいきなりこの作戦で、ずっこけた。自衛隊の最強師団に来たと思ったら拍子抜け。ハッハッハ。」とぼやいておりました。

全員ジャージ姿に片手に洗面器という戦闘集団と思えぬ奇妙な格好で演習場内にあるハスカップの自生地に人目に付かぬようぞろぞろ歩いて向かいます。

途中には何と他の中隊がハスカップを「栽培」している畑があり、看板まで立てられています。自衛隊らしからぬ長閑な景色です。「これは○○中隊。これは○○中隊のハスカップ畑。」と教えてもらい。自衛隊が「農業」までして、しかも各部隊の農園まであることにこれまたびっくりした次第です。

しかし、この「H作戦」、やってみると結構楽しい。気が付くと収穫量を競い合っています。持参した洗面器がアッという間に一杯になり、2時間もすると全員でかなりの量(これも秘密)を収穫出来ました。

でもこの作戦、繰り返しお断りしておきますがあくまで夏季の休暇期間中限定で課業外、勤務外で行っていたこと、他の訓練の時間を割いて行っていたわけではございません。

これと同様の「秘密作戦」は他に前述の「K作戦」。それに加えて「T作戦」(あくまで私が所属していた中隊での呼称です。)があり、「K作戦」は「H作戦」同様、夏場に、「T作戦」は雪解け後の春先に実施されていました。

作戦の目的、主旨は「K作戦」同様のつつましく、涙ぐましいものです。

K、Tそれぞれ何かわかりますか?私は(運よく?)この3つの作戦全てに参加することが出来ました。

答えは、

K=クワガタ虫
T=タラの芽
です。

どんな「作戦」か、その様子はご察し下さい。
どうぞ、皆さまこのブログ内で読むだけで、出来れば多言、拡散はお控えください。

かつて私の所属していた部隊で秘密裡に行われていたこの「作戦」、

果たして現在も実施されているのでしょうか?
ご存知の方がいらしたら、お教えください。

※ちなみに北海道と本州の間には「ブラキストン線」Blakiston’s line があり、植生が異なります。北海道にカブトムシ、マムシ、ニホンザルは生息していません。本州にヒグマ、キタキツネがいないのも同様の理由です。


今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。

関連記事