比較表現は英文法の中で最も難しい項目だと思います。
例えば長文中に分詞構文や関係詞、倒置の表現が出て来ても何となく読めてしまうことがありますが、比較表現の中にはしっかり身につけていないと、たとえ一語一語分析してもさっぱり理解できないものがあります。
熟語として覚えておけばよいものもありますが、センテンスで丸ごと覚えておかないと対応できないものもあります。
覚えるべき表現の数も多く、英文法学習の山場だとも言えます。
当ブログでも大学受験や英検、TOEIC等で頻出の比較表現について何回かに分けて説明したいと思います。
今回はまず、出現頻度の高い以下の4つの表現を紹介します。
1.no more than A 「Aしかない」「わずかにAしか」
2.no less than A 「Aもある、Aほども沢山」
3.not more than A 「多くてもA, せいぜいA」
4.not less than A 「A以下ではない、少なくともA」
まず比較表現で必ず目にする「no(not) more」と「no(not) less」について説明します。
ここでは
no(not)=否定(マイナス)
more=肯定(プラス)と考えましょう。
マイナス×プラス=マイナスになりますね。
no(not) moreはつまり→否定的に受け止めているという意味です。
次に
no(not)=否定(マイナス)
less=否定(マイナス)と考えましょう。
マイナス×マイナス=プラスになりますね。
no(not) lessはつまり→肯定的に受け止めているの意味です。
これを念頭に置いて以下の文を見てみます。
I have no more than three doughnuts.
(否定的にとらえる) 「ドーナッツが3個しかない。」
I have no less than three doughnuts.
(肯定的にとらえる) 「ドーナッツが3個もある。」
それでは今回の4つの表現について見ていきましょう。
1.no more than A 「Aしかない」「わずかにAしか」
※ここではmoreをnoという強い主観的な言葉で否定しています。
noという言葉には話し手の「気持ち」が入っています。noというのは数量的に0だということです。実はmoreには話し手の「もう少し多いのではないか」という期待が含まれています。テストの点数で自分としては80点ぐらい取れているのではないかと期待していたのに実際返ってきたのが70点だった。その時のがっかり感といえばわかり易い。no more thanをonlyに置き換えてみなさいというのがそういうことです。期待していたより「少ないな」という心理的な評価が加えられています。
I have no more than 10,000 yen.
「私には1万円しかない。」
※no more thanをonlyに置き換えてみましょう。
I have only 10,000 yen.
例文です。
Nogi’s Third Army had no more than one division’s worth of troops left.
「乃木の第三軍には一個師団相当の兵力しか残っていなかった。」
No more than his little sister has survived after all the other family slaughtered by demons.
「ほかのすべての家族が鬼によって惨殺された後、彼の妹だけが生き残ったのだ。」
2.no less than A 「Aもある、~ほども沢山」
※ここではlessをnoという強い主観的な言葉で否定しています。
noという言葉にはmore同様、話し手の「気持ち」が入っています。noというのは数量的に0だということです。lessにはmoreとは逆には話し手の「ちょっと少ないのではないか」という予想が含まれています。テストの点数で自分としては70点ぐらいではないかと予想していたのに実際返ってきたのが80点だった。その時の嬉しさといえばわかり易い。no less thanをas many asやas much asに置き換えてみなさいというのがそういうことです。予想していたより「多かったじゃないか」という心理的な評価が加えられています。
I have no less than 10,000 yen.
「私には1万円もある。」
※no less thanをas much asに置き換えてみましょう。
I have as much as 10,000 yen.
No less than ten Zero fighters were accompanied to escort Admiral Yamamoto’s plane.
「山本提督機の護衛のため10機ものゼロ戦が随行した。」
I have no less than three reliable young subordinate swordsmen to protect the passengers of this train.
「この列車の乗客を守るため、私には三人もの頼りになる若い剣士がいるのだ。」
3.not more than A 「多くてもA, せいぜいA」
※こちらは単なるmoreの否定。noのような主観的な「気持ち」は入っていません。客観的です。
I have not more than 10,000 yen.
「私にはせいぜい1万円しかない。」
※not more thanをat mostに置き換てみましょう。
I have at most 10,000 yen.
Director Kondo, not more than about 10 lordless samurai would apply with such a small reward.
「近藤局長、こんな少ない手当ではせいぜい10人ほどの浪士しか集まりませんぜ。」
The distance from Takayama to Sendai is not more than 600 kilometers.
「高山から仙台までは距離にしてせいぜい600キロです。」
4.not less than A 「A以下ではない、少なくともA」
※こちらも単なるless の否定。これも客観的な事実を述べているだけです。
I have not less than 10,000 yen.
「私は少なくとも1万円は持っている。」
※not less thanをat leastに置き換えてみましょう。
I have at least 10,000 yen.
I have not less than two comrades. Enough to fight you demons.
「俺には少なくとも二人の仲間がいる。お前ら鬼と戦うには十分だ。」
There are not less than 200 passengers on this train. I won’t let anyone die. I’ll fulfill my duty.
「この列車には少なくとも200人の乗客がいる。俺は決して誰も死なせない。俺は俺の責務を全うする!」
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。