近年、英検を入学選考で活用する大学が非常に増えてきました。入学試験判定に利用したり、入学後の単位認定や成績評価の判定に利用されているようです。
対象は準2級から1級で、大学入学試験の場合はほとんど準2級から準1級が対象になっています。今回は英検の各級と大学受験において要求される英語のレベルについてこれまで経験してきた私自身の個人的な印象をもとにお話します。ご参考になれば幸いです。
まずは
1. 英検準2級、まだまだ力は足りません。
推薦入学やAO入試、一般入試で利用している大学が相当数あります。
英検協会では「高校中級程度」をレベル的な目安としていますが、それでも実際は高校生の大半はこの準2級に合格するのが難しいのが実情です。
この級に合格すると、そこそこ大学受験に対応できる素地ができているかな?という印象ですが、実際のところ大学受験に関しては正直実力不足です。
共通テストでは40%~よくても50%ぐらいの得点率といったところでしょうか?英語力に対する自信はないでしょう。
まだ「大学受験で十分に戦える」というレベルではない。と言えます。
抽象的な表現の語彙力も不足しており、英字紙や雑誌、websiteを読んでも十分に理解できないレベルでしょう。英語が「得意である」といえるレベルではありません。
2. 英検2級、なめてかかれば受かりません。
大学受験で最も利用されているのがこの英検2級です。
英検協会では「高校卒業程度」としていますが、高校生でこの2級に受かる英語力のある生徒は非常に少ないというのが私の印象です。
大半の高校生は「自分も2級ぐらいは合格できるんじゃないか?」とこの試験をなめてかかっています。しかし、実際には全高校生の10%もこの試験には受からないでしょう。
進学校の生徒でも実際にはほとんど受からないのが実情です。
上位進学校の中位クラスの生徒であれば受かる可能性あり。といった印象です。
スピーキングとライティングがあるため、単語の発音を軽視したり、音読をしていない学習者にはとっては予想以上に難しいのが2級です。
ほとんどの高校生や大学受験生は音声学習を軽んじており、その重要性を説いても聴く耳を持ちません。そしてなめてかかってこの2級に不合格になり、ショックを受けます。
英検2級に合格できれば大学受験を十分戦えるレベルです。
ただし難関国立大、難関私立大を目指すのであればここからさらに上の準1級レベルに踏み込んだレベルの語彙力、長文読解力は欲しいところです。
この英検2級は共通テストよりレベル的には少し上という印象です。
2級合格の力があれば、共通テストで少し調子が悪くても得点率7割は固いでしょう。
問題の巡り合わせで運が良ければ8割越えも十分可能だと思います。
大学受験英語にもっとも近いレベルですので受験生であればまずこの2級レベルの実力を身につけたいたいところです。
逆に言えば英検2級に合格する力のない受験生が共通テストを受験しても8割越えはまず、ほぼ不可能という印象です。
語彙力も2級レベルをある程度マスターしているのであれば大学受験に十分対応できます。「聴く」「話す」力も要求されますので、一般的な英語学習にも非常に有効であり、大学受験者がまず最初に目指すべきレベルがこの2級だと思います。
実際は高校の上級レベルの生徒や大学生が主に受験しているのがこの2級ではないでしょうか。
このレベルの人は英語にある程度の自信があります。英語に対する苦手意識も払拭されています。英文を読んだり、外国人と英語でコミュニケーションするというシチュエーションを避けたりしないはずです。
しかし、上級英語への基礎といったレベルですから「英語が得意、自信がある」という英語力ではありません。
2級に合格したら英字紙や英語のwebsiteにもどんどんチャレンジしていきたいところです。
3. 英検準1級、高校生や大学受験生で合格できるのはほんの一握りです。
大学受験で準1級レベルを要求しているのはごく少数の難関国立大、難関私立大だけです。
英検協会では準1級を「大学中級程度」としていますが、実際の準1級受験者は英語専攻の大学生や社会人が大半ではないでしょうか。
高校生でこの準1級に合格しているのは帰国子女等を除けば非常に稀です。よほど英語が得意で自信のある生徒でなければ合格するのは実際難しい。逆に「英語に自信がある」と自負している、あるいは将来英語関連で身を立てたい、英語教育に携わりたいと考えているのであれば是非、高校生のうちに取っておきたい資格です。
英検準1級は自他ともに英語力に十分自信があるだろうと認められるレベルです。英会話が必要な場面やレベルの高い英文を前にしてもひるむことなくチャレンジ出来る人でしょう。
中学校、高校の英語教員や外資系企業などの英語力を要求される仕事を目指しているのであれば、最低限必要なレベルなので必ず合格しておきたいのが準1級です。
しかし、大学受験生であればこの級を目指して高校在学中にこの準1級合格にのみ焦点を当てて勉強することはあまりお勧めしません。
実際、語彙力や長文のレベルが大学受験レベルを超えていますので、効率のいい勉強で大学受験で高得点をとるという視点、あるいは有効性の高い勉強法という点から考えると準1級合格のための勉強がそのまま大学受験に役立つとは思えません。
当然の事ですが、大学受験科目は英語だけではありません。効率的で有効な学習方法と学習時間配分で総合点を高めなければ大学受験で勝てないのは言うまでもありません。
英検準1級の勉強より、大学受験用の単語帳や「パス単」の2級といった単語帳の語彙力をしっかり固めることを優先したいところです。
しかし、準1級合格の実力のある高校生であれば、こと英語力に関して言えば東大、京大を含めた難関大学にチャレンジする力が十分あると思われますので、共通テストの後の一か月で希望大学の過去問などををしっかりやって志望大学の試験の傾向を掴んでおくことが最も有効な勉強法かと思われます。
また、英検準1級合格の実力があれば共通テストで得点率9割越えは固いと思います。調子が良ければ満点も可能なレベルです。
英検準1級の力があれば英字新聞を辞書なしで読んだり、海外のネット情報にアクセスする語彙力も十分ありますから、英語については相当の自信を持っているはずです。英文を読んだり、外国人と接することに積極的な人がほとんどです。
4. 英検1級、大学受験を軽く凌駕しています。英検1級より難しい入学試験は存在しません。高校生、大学受験生で合格できれば、英語に関してはトップエリートです。
英検協会では「大学上級程度」とされていますが、大学生でこの1級に合格しているのは難関大学の英語専攻の学生のごく一部か社会人だと思われます。
英検の全受験者のうちこの試験に合格しているのはおよそ2500人に1人の割合です。英検1級受験者の1割しか合格できないのが実情です。
合格者は毎年2500人前後。東大の合格者より少ない。
率直に言って目がくらむような非常に狭き門です。
大学受験でこのレベルを要求する大学はありません。
よく、ある特定の大学の英語の問題は英検1級より難しいのではないか?という意見も見かけますが、英検にはライティングとスピーキングの試験が課されているという視点が欠けています。
英検より難しいと思わせる単語や構文を長文問題に組み込めば外見上、英検を上回る難易度のように見えますが、実際はその大学に合格した受験生に英検1級を受験させてもほとんど受からないと思います。
要求されるとしても語学系の大学院受験のレベルの話になります。実際、大学院入学試験においても英語の試験を免除する大学があります。
大学受験に関してこの1級レベルであればどんな難関大学でも英語に関しては合格できるレベルと考えてよろしいです。
共通テストのあとで志望校の過去問をしっかりやれば、英語に関してはもう大丈夫です。
難関大学の入学語の単位認定や成績評価に利用されていることが多いです。
英検1級は通訳案内士試験と並んで一般的に日本での英語関連の主要資格で最難関といえます。
5. 英検1級の「高い壁」に大半の受験者はひるんでしまう。
英検準1級に合格した人の多くは次はこの「1級」を目指します。
英検1級が手の届くところに来た。と思いますが、すぐに準1級と1級の間に非常に高い壁があることに気づかされます。
英検1級の受験者のほとんどが準1級の保持者であると想像できますが、
合格者は前述のように毎回10人に1人程度です。
率直に言って、それは2級と準1級の壁とは比較にならないほどのもので、準1級合格のために積み重ねた何倍、あるいは何十倍もの努力が必要です。残念ながら大半の『英語志向』の学習者はこの壁が越えられず「英検1級」を断念していきます。
しかし、英検1級に合格するのはそれを「あきらめなかった」人たちです。不合格にめげずに何度も食らいついた人たちです。
英語学習者であれば最終的にこの1級を目指したいところですが大学受験のレベルをはるかに超えていますので、大学受験生であれば大学入学後に目指せばよろしい。
ある意味で大学受験とは全く関係のない級といえます。
英検1級取得者は次に唯一の国家資格である「全国通訳案内士」の合格を目指す人が多いのですが、この試験において一次試験の英語筆記試験が免除される特典があります。
筆記試験の英語は「全国通訳案内士」のそれより英検1級の方がずっと難しい。しかし、英検1級合格者で英語に自信がある人でも今度は「全国通訳案内士」の「日本史」「地理」「一般常識」の日本語の筆記試験が高い壁になっており、それが理由なのか帰国子女の人たちはほとんど受験しないようです。
6. 英検受験者は今後も増加する
英検の受検者は増加する傾向です。2022年度の年間の総受検者が360万人(英検協会)に及びます。今後もますます増えていくと予想されます。
以上、英検と大学受験について話してきましたが、近年、高校においては以前はあまり英検に関心のなかった進学校においても受検を薦める動きが顕著になってきています。
大学受験の出題内容や形式が英検やTOEICの形式に似てきているという実情があるのがその一因かと思われます。
高校生の受験希望者が非常に増えてきた印象です。
ただ、大学受験については共通テスト、国公立二次試験、私大入試と、それぞれ傾向や内容が異なりますので個々の対策が必要です。英検対策のみでよいとは当然言えないところがあります。
ある程度の語彙力、長文読解力については共通する部分もありますが、それぞれの大学の入学試験に対する独自の対応、勉強、情報収集が必要なのは言うまでもありません。
私見であることを重ねて申し上げますが、皆さんの参考になれば幸いです。
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。