中学校や高校の英語学習とはあまり関係がないかもしれませんが、すでに学校を卒業した成人や社会人の方で、もう一度英語の勉強をやり直したいと思われている方は多いと思います。
語学学校や英会話スクール等ではネイティブ講師、日本人講師を自由に選べるということはあまりないと思いますが、マンツーマンで習いたい時などはネイティブの先生、日本人の先生のどちらから習ったらいいか少し考えますよね?
言い換えれば英語を母語としている人から習うべきか、日本語が母語で、英語を外国語として学んだ人から習う方が良いのかということです。今回は英語の力をつけるとことを重点ポイントにしてどちらが効率的に外国語を学べるのか?という観点で私の考えを述べてみたいと思います。
ネイティブ講師or日本人講師とひとくくりにするのは少し乱暴な定義の仕方ですが、以下の何点かに絞って私の考えを述べさせていただきます。
1.英会話を習うのならネイティブ講師
2.文法を習うのなら日本人講師
3.上級者と自負しているならネイティブ講師
4.少し自信がない初級、中級者であれば日本人講師
5.文法、語彙に自信のない人がネイティブ講師に習っても非効率
まず
1.英会話を習うのならネイティブ講師
受験英語や学校英語は少し脇に置かせていただいて、社会人、成人の方で英語の勉強を改めて始めてみたいと思われている方の大半は「英語が話せるようになりたい」「英語で上手にコミュニケーションできるようになりたい」という方たちではないでしょうか?
そしてどこかで習うのであれば英語を母語としているネイティブの先生に直接、手ほどきをしてもらいたいと思っていいる方も多いと思います。まずはとりあえずナマの英語に触れることが英語習得の最短の学習法で「習うより慣れろ」と思われる方が多いのは自然なことです。
しかしネイティブのコーチングで効率的に、出来るだけ短期間で英語力をつけるには少し条件があります。その条件とは、まず習う側に第一に基礎文法力、基礎単語力があるかどうかです。
例えば、学校の授業で習って以来、何年もの学習の空白期間があり、中学校レベルの文法力、単語力にも自信がないという方がいきなりネイティブから英会話の指導を受けてもほとんど効果がないといってもいいでしょう。
言い方は失礼かもしれませんが「外国人慣れ」することぐらいしか有効性はないでしょう。お金の無駄とまでは言いませんが、おそらく費用に見合わない効果しか得られないでしょう。
少し厳しい言い方になるかもしれませんが、ナマの英語が飛び交う空間に身を置くことで自然に英会話の力がつくというのは小学生以下の子供でもない限り単なる幻想にすぎません。
中学生以上になれば文法構造を論理的に理解した上で文章を組み立てる力や、その文法レベルに見合った語彙力を並行して積み上げていかなければ英語力の向上は望めないというのが日頃感じていることです。
儀礼的な挨拶や社交儀礼的な英語は流暢に話せるようになれるかもしれませんが、話が少し深いレベルになったり、応用力が要求される場面になると文法的にも語彙的にも全く歯が立たなくなります。英語力の上昇カーブも頭打ちになり、英語学習の熱意も冷めることになりかねません。
英会話であっても文法力を切り離してこれを身につけることはできません。英会話表現には基本的な文法力がないと理解できない文構造も使われているので、本格的に腰を入れて身につけたいと思われるなら、少なくとも高校レベルの英文法力は必要だと思います。
「英会話に文法力は関係ない」「英語は慣れて覚える」というのは間違いです。
英会話のテキストを見ればその中にに5文型、品詞、句、節、分詞、不定詞、動名詞、助動詞、関係詞、仮定法といった文法単元で見た語法が用いられていることが容易に見て取れるはずです。
英会話力を効率的に、短期間で向上させたいのであれば、一見遠回りのようですが、高校英語の文法力、語彙力を固めてから始めるのが実は最も効率的なのです。
2.文法を習うのなら日本人講師
実際、いきなりネイティブから基礎文法を習うということはほとんどいないと思いますが、ネイティブでも英文法を体系的に教えることが出来るのは外国語教授法を修めたようなティーチングメソッドを習得している人だけです。
翻って、日本語の習得を目指している外国人に対して、日本語ができる、話せるからといって誰でも教えることが出来るとは思わないはずです。日本語教授法や音声学を学んでいないと、なぜ「一本」「二本」「三本」を「いっぽん」「にほん」「さんぼん」と発音するのか質問されても答えられません。
同様に英文法や音声学をしっかり勉強して教授法を学んでいない、単に英語を話せるだけのネイティブ講師は「なぜここはwhereでなくてwhichなのか?」とか「なぜこっちはinでこっちはofなのか?」こういった質問に答えるのに苦労するはずです。
「アメリカではこんな風に話す」「日本ではそのような言い方はしない」こういう答えがよく返ってきます。
「受験英語」と揶揄されたり、自嘲したりしますが、文科省の学習指導要領を侮ってはなりません。英文法を説明するにあたって、受験勉強で培った地味な文法力がことのほか役に立つことは言うまでもありません。英会話の力を伸ばすにはまず初めに中学、高校の学校英語をしっかりやる、やり直して基礎力をつけることこそが最も効率的な学習法なのです。
インプットの量が少ない人が、ネイティブから教わっても得られるものは非常に少ないのです。
3.上級者と自負しているならネイティブ講師
自分が上級レベルの力があると自己評価できるのであればネイティブ一択です。
このレベルであればテキストが殆ど辞書なしで読め、分からない文法事項も自分で調べて問題を解決できるはずです。英語上級者であればもう先生などいらない。独力で学習できるだろうというのが私の印象です。自立した学習で十分に英語力を上げられるはずです。
このレベルの学習者がネイティブ講師に要求するのは細かな単語のニュアンスや表現の違い、発音の矯正など、英語を母語として使っている人でなければ分からないようないレベルの英語力のチェック、修正です。文章を推敲するような感覚です。
意思疎通という点でははほとんど問題ないが、この場面ではこのような言い方はしないとか、同義語の細かなニュアンスと違いを指摘してもらえることが学習者が一番期待していることであり、ネイティブの指導を受ける最大のメリットでしょう。
実際、ある程度の語彙力の蓄積があれば、ネイティブから与えられたヒントは非常に役に立ちます。
英語を実践的に使うチャンスがほとんどない、あるいはネイティブ相手に話をしたことがない人であればネイティブに自分の英語が通じる。ネイティブの言っていることがわかるという経験をすることで自分のそれまでの学習が無駄ではなかったと実感し、自信を深めることが出来、学習のモチベーションが一層高まって勉強のやり甲斐がでてきます。
4.少し自信がない初級、中級者であれば日本人講師
初級、中級の学習者であれば英語を第二言語として学習した経験のある日本人講師一択です。
講師自身が苦労して人に教えられるまでの英語力をつけてきたわけですから、学習者がわからないのは何が原因なのか、どこでつまづいたのか、どんな知識が足りないのか、何が理解できていないのかが自分の経験からよくわかるからです。
非ネイティブが苦労して習得した語学は理論立てて効率的に身につける術を承知しているので、文法説明する際もポイントを押さえて効率的な学習を促すことが出来る。取りまとめがうまいことが期待できます。学習者のかゆいところに手が届くからです。
ただ、当然のことですが、本人の英語の実力と実際に他者にそれを教える力が決して比例しなことがあるのも事実です。教わる側の能力、素養、進捗の速さを考慮して学習計画を組み立てられるような講師でなければなりません。またネイティブ、日本人にかかわらず、一度、体験授業を受けた上で受講を決めることが大事です。講師との相性というのも重要な条件です。
5.文法、語彙に自信がない人がネイティブに習っても非効率
繰り返しになりますが、ネイティブに英語を習う場合、その前提として基本的な文法力や語彙力の蓄積があればあるほど学習が効率的に進みます。
ネイティブ相手に文法に自信がない。出てくる単語がほとんどわからない状態で受講しているのは費用対効果の観点からある意味で非常にもったいない選択だと思います。
ネイティブ講師に一番期待するのは発音と語法、用法のチェックであり、初歩からネイティブに手取り足取り教えてもらったり、基本文法項目を習うことは経済的ではありません。日本刀で魚をおろしているような勿体なさがあります。
ぜひ、ネイティブしかわからないような本場感覚、音の正しさをチェックしてもらいましょう。ネイティブ講師との会話で気づかされる自分の間違った常識や先入観を矯正してもらうことこそが、ネイティブに習う最大のメリットです。
少し恥ずかしい話ですが、私自身ネイティブとのやり取りで初めてNice to meet you.とNice to see you.の違いを知りましたから。
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。