今になって考えると、英文法の勉強は語彙力の強化と並行してやっていくのが当然のことだと思いますが、実は私、英検1級に合格した後で英文法の勉強を真剣に始めました。
独学で勉強していたのでというと言い訳になりますが、英単語と熟語の暗記、そして多読のみで英語力がつくと勝手に思い込んでいました。
でもこれが実に非効率な学習法であることをすぐに思い知らされました。
やはり本当は文法もしっかり勉強すべきだったのです。
結果的に私の勉強は遠回りなものになりました。
そこで今回はこの大事な英文法の学習法についての話です。
以下のような内容になります。
1.学校の勉強は英文法中心で役に立たないのか?
2.「中学校の英文法だけでOK」は本当か?
3.英文法の勉強が苦痛になるような勉強法をしていませんか?
4.英文法からの卒業を視野に入れていますか?
まず、
1.学校の勉強は英文法中心で役に立たないのか?
英文法ばかりしていると確かに退屈です。でも英文法の勉強は効率的に英語の仕組みを理解するためにとても重要です。
私たちは英語を母語としていません。英語を母語とする人たちは別に grammer の勉強をしっかりしていなくても、あるいは学校での grammer の成績が散々でも自由に英語を操っています。物心がついた時から母語として日本語を使っている私たちもこの点は同じです。
でも、私たちは英語を外国語として学んでいます。幼児ではありませんから理屈が分からないと頭の中に入ってきません。応用もできません。
英文法学習によく見られる多くの例文を闇雲に覚えてテンプレートを増やすやり方は実は非効率な学習法だと思っています。
ただ残念なことに、この非効率な指導、勉強法が学習現場で未だに散見されます。
英文法の基本を理解していないのに文法単元ごとの例文を何百も覚える。といった指導法が横行しています。
例えば比較表現の丸暗記。代表的なもので「クジラ構文」といわれるもの。
A whale is no more a fish than a horse.
「クジラは馬がそうでないのと同様に魚ではない。」
これを何度も何度も書いて暗記する受験生をよく見かけますが、この構文の最も大事な no more と than がどのような役割を果たしているかの理解なしに英文と訳だけを覚えさせる。そんな作業です。
「なぜ、そのような訳になるのか文構造を分解して説明してみて?」と訊いてもまず説明できません。これではその文法項目を実際に他の場面に応用できません。
このような指導法、勉強が英文法の勉強を「役に立たない」ものにしています。
英語の学習においては単語、熟語の暗記は確かに重要です。
しかし英文法は暗記科目ではありません。論理系です。
まず、英文法の基礎をしっかり身に着けていないと、
・英文がクリアに理解できません。何となくわかっているだけでモヤモヤが消えません。
・前後の言葉の繋がりが分かりません、単語と単語の関係性が分かりません。
・例文を覚えようにも理屈が分かっていないので覚えるのに時間がかかって苦労します。
・一見、簡単そうに思える英会話集の表現もすんなり身に付きません。
人間の体に例えるなら英文法は骨格です。単語は肉です。熟語、慣用表現は血です。
英文法がしっかり身に着いていないとあなたの英語はグネグネです。
学校で習う英文法は無駄で役に立たないなんてことはありません。
英語学習者にとって必須のもの。効率よく学習を進めるための土台となるものです。
「中学校の英文法だけでOK」は本当か?
私のように社会人になって英語の勉強をもう一度やり直すという人、また高校生で基礎がしっかり身に着いていない人、それから「難しい英文法はいいから、とりあえず、実践的で簡単な英会話を身に着けたい。」こんな人にはまずは中学校で習う英文法のおさらいでOKだと思います。
これで海外旅行でも十分対応できると思います。
しかし、一見簡単そうな内容に見える英会話集(私も利用しています。)でも以下のような表現がよく出てきます。
I would choose this one.
「私だったらこちらを選びます。」
How are you today?
「今日の調子は?「」
Couldn’t be better.
「絶好調です。」
なぜ今現在のことを言っているのに助動詞が過去形なんでしょうか?
お分かりでしょうか?これは「仮定法」です。高校で習う文法単元です。
ある意味高度な、大学入試の問題になるような表現ですが、日常会話で普通に使われています。
つまり、しっかりと英語を身に着けたいのであれば中学校英語の文法だけでは全く不十分です。高校レベルまで、勉強しましょう。大学受験に対応できるほどの文法力が身に着いていればもう十分です。
英語を習得したいのであれば最低でも高校レベルの英文法まで学習しましょう。
英文法の勉強が苦痛になるような勉強法をしていませんか?
上述したように英文法を暗記科目だと思って学習している人には勉強が非常に苦痛なものになります。確かに文法を理解するうえで2、3の例文を暗記することは有効な方法です。
でもこれを何百とか千覚えると考えたらだれでも嫌になりますよね。
私がお薦めするのはポイントを3つとか5つ位に絞って覚えるやり方です。
例えば以前の記事前置詞の of 簡単そうだけど、この意味わかりますか?で話したように前置詞 of の用法を4つだけに絞って覚えるというやり方です。
これにならって「接続詞asの5つの意味」とか「so that構文の4つの用法」「分詞構文の5つの意味」というように覚えていきます。これが自分の頭から呼び出せるかどうかがその理解度の目安となるわけです。
大学受験生に対してはよく、
「現在進行形が持つ3つの意味わかりますか?」
「文中で会った 動詞+ing 形の3つの役割は?」
「文中に登場する that の3つの役割は?」
「接続詞の as の5つの訳し方は?」
こんな感じの質問を投げかけます。答えがすっと出てくるようであればその文法項目については大体OKです。
出てこないようであれば「この3つは覚えよう」「この5つは是非覚えておこう。大抵はそれで対応できるはず。」と言ってノートに書きとらせます。これで自信がついていくはずです。
受験生の中には「接続詞の that が続く代表的な動詞50個」とか「後ろに動名詞が続く代表的な動詞30個」を覚えようとしている強者もいますが、そんな時は
「動名詞が持っている3つのニュアンス」
「to不定詞が持っている3つのニュアンス」
「この基本だけ押さえておこう。これだけで7,8割は対応できる。」こんな話をします。
完璧に覚えようとしないこと。7割ぐらいで大丈夫。英語の勉強はこの感覚でOKです。
ただ、文法が苦手な人によく見られるのは文法の説明で話されている「短い表現だが重要なこと」を聞き漏らしていることが多いことです。
「前置詞+名詞は副詞になる」
「補語になるのは名詞か形容詞だけ」
「補語があるということは文中に補語とイコール関係の名詞が必ず存在する」
こんな文法上肝心なことを聞き洩らさない。これが大事なことです。
繰り返すと
1、覚えるべきポイントを数個に絞ること。
2、英文法は暗記ではなく仕組みを理解する勉強であること。
3、完璧を目指さない。
4、何度も出てくる短い重要説明を聞き洩らさない。
これがポイントです。
勉強が苦痛にならない様に効率よく学習して英文法の勉強をさっさと終わらせましょう。
英語学習の目標はそんなところにないはずですから。
英文法からの卒業を視野に入れていますか?
英文法の勉強はもちろん重要ですが、実は早くそこから卒業すべきです。
英文法を一通りマスターすることは英語学習の目標ではありません。通過点にすぎません。
大学受験生であればできれば高校2年ぐらいで英文法の学習を一通り終わらせましょう。
そして長文、リスニングに移行して語彙力、速読力を鍛えていきましょう。
社会人であれば英文本がひと段落したら生の英語、教材ではない普通の英語にどんどん触れていきましょう。教材英語からは卒業しましょう。
英語ネイティブの人たちが普段読んだり、見たり、聴いたりしている生きた英語の世界に浸っていきましょう。
英語学習の本当の面白さはここから始まっていくはずです。多くの受験生は大学受験を最後に英語学習から離れていきますが、せっかく勉強してきたのになんと勿体ないことでしょうか。重箱の隅をつつくような英語の勉強とはさよならできるのに。
インターネットやYoutube、原書といった無限に広がるコンテンツを大いに楽しみましょう。
今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。