その他雑記

大谷翔平選手の通訳、水原一平さんの翻訳方法と私の「全国通訳案内士」二次試験の失敗談。逐次通訳はなかなか難しいぞ!


大谷翔平選手の通訳、水原一平さん


大谷翔平選手のメジャーリーグでの大活躍を沢山目にしました。

日本人としても野球ファンとしても大変嬉しいことです。そしてこれから楽しみ。

ところで英語学習者として取り上げたいのは、いつも一緒にベンチにいる大谷選手の日本ハム時代からのチームメイトで通訳の水原一平さんの非常に印象的な通訳術です。

「一平さん」の通訳で非常に特徴的なのは彼が大谷選手の談話を英語に翻訳する時、またインタビュアーの英語を日本語に通訳して大谷選手に伝える時にほとんど直訳をしていないことです。

スポーツ選手のインタビューは感想、印象がメインだという点も考慮する必要ありますが、見事なまでに「一平さん自身の言葉」で表現しています。

その様子は機会があればぜひ、一度 [YouTube] 等でご覧下さい。本当に感心させられます。

元の言語(英語、日本語)の直訳はほとんどなく、話し手の発言の意図を上手に汲み取って話し手が使った言葉の直訳ではなく、一平さん自身の「自分の言葉に置き換えて」で表現しているのです。

相手が発した単語、表現ではなくその内容、イメージを一度、自分の頭に落とし込み、そのイメージを「自分が組み立てた言葉、表現」で伝えています。

学校英語の授業でやっているような英文和訳、和文英訳と言う点では高得点は望めないような翻訳ですが、話し手の意図するところが相手にしっかり伝わっています。


全国通訳案内士試験の逐次通訳

一平さんの仕事を通じて改めて「通訳すること」について考えてみたわけですが、これに関して
私には苦い経験があります。

全国通訳案内士の二次試験(口頭試験)にはこの逐次通訳が課されますが、私の場合はこれを突破するのに大変苦労しました。


試験官は日本人とネイティブの二人です。
日本人の試験官が5行ほどの観光案内文、大体は名所、旧跡やお祭りといった日本的事象の説明を一度読み上げ、これを聴き終わった後に英語に逐次通訳するものでした。

メモ用紙と鉛筆が渡されますので内容をメモして構いません。


大事なのは頭でイメージを描くこと

独学で勉強していた私はこの逐次通訳の作業を勘違いしていました。

読み上げられた日本語の文を完璧に英語に直訳しなければいけないとずっと思っていました。


残念ながら短時間で試験官が話す内容などとても全て書き写すことなどできません。

「試験官が話す内容の概略をメモとして書き写す」と勝手に考えていたことが間違いだったわけです。

要はメモ用紙には固有名詞や数字のキーワードだけ数語メモすれば良かったのです。

試験官の読み上げを聴きながら優先的にすべきことはそれを一言一句「書き写す」「メモを取る」ことではなく、その内容のイメージを自分の頭に落とし込むことだったのです。

それまでずっと『通訳する』とは『ある言語を他の言語に置き換えること』だと思い込んでいました。

学術的なこと、外交文書のプロトコルを作成したり、政治的な内容の通訳であればちょっとした単語の転換が重大な問題になりかねませんが、観光案内や私的な内容の通訳であれば、直訳せずとも、話し手の真意や必要な情報が伝わればよいのですから、細かい言葉尻にあまり神経を使う必要もないわけです。

一言で表現できなければ言葉を三つ、四つ重ねていってもいいのです。

これに気づいたのは二回連続で面接試験に不合格になった後でした。

3回目はほとんど準備らしいこともせず「もう、どうでもいいや」と開き直って半ば捨てばちな感じで臨みました。面接会場は世田谷にある某女子大学。

3回目の時は書き写した単語はほんの3つほどだったと思います。
後はメモした単語を話す内容の中に挟んで自分の頭にあるイメージだけを英語にして話しました。

逐次通訳の正確性はあまり重視しませんでした。


自由選択のお題は「国立西洋美術館」

逐次通訳の次は与えられたカードに書かれた数点のテーマの中から一つ選んでそれについて英語で説明するという課題が与えられます。


ちなみに初めての二次試験では「お彼岸について」

2回目は「日本の新幹線」を選択しました。

2つとも不合格になった「お題」でした。

3回目の私が選んだのは上野にある「国立西洋美術館」についてでした。

少し前に息子が修学旅行でここを見学しており、その時に彼から聞いた中の様子や見てきた展示品が私のもっている情報のほとんどでした。

私はキーワードを「設計者のル・コルビジェ」「フランスの印象派」「建物が世界遺産に指定されたこと」をキーワードにして話しました。

その後で私が話した内容についてネイティブ試験官(発音から察するに英国婦人)からの質疑、応答があったのですが、私の場合は質問の内容の「イメージ」が即座につかめず、[I beg your pardon?]を2回ほど発したと思います。

相手の話している内容を言葉でとらえるのではなく「イメージ」で捉えることが大事だと思います。


「自分の言葉」で話すことが大事


質疑応答では「入場には予約が必要ですか?」「入場料はいくらですか?」という質問がありましたが、前述したとおり、そもそも私は国立西洋美術館に入ったことがありません。


「私は東京在住でありませんので詳しいことはわかりませんが、時間をいただけるようでしたら調べてご返答します。」と答えました。

何の準備もせず開き直っての受験でしたが、結果は合格でした。

相手の一言一句を聞き漏らさないように神経を張り詰めて聴くのではなく、具体的なイメージを掴むことや全体像を把握することに集中することが大事ではないでしょうか。

あとはそのイメージを自分が知っているシンプルな英単語、平易な表現で話せば良いわけです。


英検や通訳案内士の二次試験では実際に試験官の質問を聴き取って、自分の言葉で表現する能力が要求されます。

想定されるテーマごとの模範解答を何例も暗記して二次試験に臨む人もいるようですが、私はそのような準備を一度もしたことがありません。

暗記した内容が出題されるような簡単な試験ではないと思っていたからです。

そのためか、合格するのに苦労しましたが、でも結果的にはそれでよかったと思っています。

英検1級の二次試験の体験談は英検1級の面接 私の二次試験体験をお話します。でも取り上げていますのでそちらもご参照ください。

今回申し上げたことはあくまで私個人の体験談ですが、これから受験される方の参考になれば幸いです。

 

今回は以上です。
ご精読いただきありがとうございました。

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